当院の紹介記事
清水整形外科医院
 
東京都世田谷区奥沢5-14-11
TEL 03-5701-2801
 
わかさ 2011年12月号 @
第1章 (本誌P48〜)>第2章へ

脊柱管狭窄症は神経の圧迫に加え筋肉硬直や血流不足で悪化し、治す決め手は「狭窄症テーピング」

 

スッと立ち上がってスタスタ歩けた

整形外科では通常、腰痛を訴える患者さんに対して、薬物療法・神経ブロックなどを用いて治療します。しかし、難敵中の難敵ともいえる腰部脊柱管狭窄症(以下、脊柱管狭窄症)に対しては、これらの治療法では歯が立たないこともしばしばです。こうした難治型の腰痛を治せる方法はないものか。試行錯誤の末に私がたどり着いた一つの結論が、「狭窄症テーピング」でした。

狭窄症テーピングとは、カイロプラクティック(米国発祥の手技療法)の専門家である加瀬健三氏が考案した「キネシオテーピング」を、脊柱管狭窄症の患者さん向けに私なりに応用したテーピング法です。

キネシオとは人間の体の動きを研究する学問「キネシオロジー(人体運動機能学)」の力。キネシオテープは陸上競技や相撲の選手が腰やひざによく貼っているので、テレビで見たことのある人が多いでしょう。伸縮性のある薄い粘着テープを、筋肉に沿って肌表面に貼るだけで、軽い腰痛はもちろん、ギックリ腰のような激痛でも、その場ですっかりよくなってしまうケースが少なくないのです。

実際に私は、足腰のひどい痛みを訴えて立つのもやっという重症の脊柱管狭窄症の患者さんでも、狭窄症テーピングを行ったらその場で症状が和らぎ、スッと立ち上がってスタスタ歩けるようになった例をいくつも目の当たりにしています。

 


テープを貼るだけで腰痛がよくなる理由

それにしても、テープを貼るだけでなぜ脊柱管狭窄症の症状がよくなってしまうのでしょう。それは、脊柱管狭窄症と診断されている人にはよく現れる腰痛・坐骨神経痛・足のしびれ・間欠性跛行(こまぎれにしか歩けなくなる症状)は、実際には筋肉の攣縮(スパズムという)が直接の原因になって起こっている場合が多い、と考えられるからです。

 もう少しくわしく説明しましょう。一般に、脊柱管狭窄症の諸症状は、脊柱管の狭窄によって神経が圧迫されるために起こるとされています。しかし、画像検査で脊柱管に狭窄が認められても、症状が出る人と出ない人がいます。その最大の違いは、筋肉のスパズムの有無にあると考えれれるのです。

 脊柱管に狭窄が生じると神経が圧迫されて、その周囲の筋肉ではおのずと血液やリンパ液の流れが滞りやすくなります。すると、筋肉にスパズムが生じ、筋肉自体が硬直して血流もさらに悪くなるという悪循環に陥ってしまうのdせう。すると筋肉内では発痛物質が次々に生成され、腰痛・坐骨神経痛・足のしびれ・間欠性跛行が現れるわけです。脊柱管狭窄症と診断されている人の場合は、特に腰の脊柱起立筋とお尻の中殿筋にスパズムがよく起こります。
そこで、狭窄症テーピングの出番です。スパズムが生じている脊柱起立筋や中殿筋に沿って伸縮性があるキネシオテープを貼っておくと、その間はテープの力で皮膚が引っぱられるため、皮下と筋肉の間に一定の余裕ができ、血液やリンパ液の流れが継続的に促されます。その結果、筋肉のスパズムが解かれて発痛物質も速やかに排出され、症状が和らぐのです。
それと同時に、テープを筋肉に沿って貼っておくと、衰えていた筋肉の力がテープの伸縮力によって補われるので、筋肉自体の硬直を和らげたり、望ましい姿勢を維持したり、関節の柔軟性や可動域(動かせる範囲)を保ったり、骨格のズレやゆがみを矯正したりする筋肉の働きを補助する効果まで期待できます。これも脊柱管狭窄症の症状の改善に大いに役立ちます。
 また、狭窄症テーピングは腰痛すべり症(背骨の一部が前方にズレて足腰の痛み・しびれが起こる病気)にも効果を発揮します。


脊柱管狭窄症は治しやすくなった

テーピングといってみなさんがまず思い浮かべるのは、関節を固定・保護する従来のスポーツテーピングかもしれません。

スポーツテーピングでは、関節の可動域を制限することが目的なので、主に伸縮性のないテープが用いられます。

一方、キネシオテーピングの理論を応用した狭窄症テーピングでは、血液やリンパ液の流れを促したり、筋肉の硬直を和らげたりすることが主な目的なので、伸縮性のあるキネシオテープを用いるのです。

当院では、脊柱管狭窄症と診断されて来院する患者さんに対し、一般的な診療とともに、まずは狭窄症テーピングをすすめています。これでかなりの確立でよくなる人が多いのですが、それでも改善が見られない重症例の場合は、トリガーポイント療法(本誌P79参照)やプラセンタ療法(本誌P97参照)を併せて行っています。こうした治療を駆使することによって、脊柱管狭窄症はずいぶん治しやすくなったと私は感じています。


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