その場ですぐに痛みが和らいだ
この記事からは狭窄症テーピングの効果について実際の症例で説明しましょう。
今年の7月、58歳の男性Aさんが私のクリニックを訪れました。Aさんは右足の痛みとしびれのために、すでに腰部脊柱管狭窄症(以下、脊柱管狭窄症)の手術を二回受けていて、自分ではもう治ったものと思っていたようです。
ところが、手術後、しばらくして左足まで強く痛んだりしびれたりするようになってきました。そこで主治医に相談したらまたもや施術をすすめられ、さすがに辟易したそうです。もう手術はしたくないとのことで、私に相談にきました。
Aさんは、間欠性跛行(こま切れにしか歩けなくなる症状)がひどくて100メートルも歩けないほどのかなりの重症でした。しかし、脊柱管狭窄症の患者さんとしては、まだ若いほうだったので、私は治りは早いと判断しました。
そこで、まずはトリガーポイント療法(筋肉の圧痛点に局所麻酔薬を注射する治療法。本誌P79参照)を行ったあと、「脊柱起立筋テーピング」<第1章参照>の2種類の狭窄症テーピングをしたのです。すると、その場ですぐに痛みやしびれが和らいだとAさん自身もたいそう驚いていました。
治療開始から三ヶ月たった現在、Aさんに左足の痛みやしびれは全くありません。間欠性跛行もすっかりよくなり、今ではテーピングなしで過ごせています。
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痛みが取れたらテープをはがしていい
狭窄症テーピングでは、痛みが取れれば、もう必要はありません。もし、再び痛みやしびれが出るようなら、またテーピングを行えばいいのです。
ちなみにテーピングと似たものに、コルセットによる装具療法があります。腰にやさしい軟性コルセットを装着すれば、確かに腰がらくになるのがわかります。しかし、狭窄症テーピングとコルセットは全く異なるものです。
背骨を固定し、体重を支える筋肉が衰えてしまい、はずすとかえって痛みが強まるケースが少なくありません。
一方、狭窄症テーピングでは、衰えていた筋肉の力がテープの伸縮力によって補われることになります。テーピングにより、関節の柔軟性や可動域(動かせる範囲)を保ったり、骨格のズレやゆがみを矯正したりする筋肉の働きを補助する効果が期待できるため、筋肉が衰えることはないのです。
こうして狭窄症テーピングで足腰の痛みやしびれが和らいだら、ウォーキングなどを行って積極的に体を動かし、背骨を支える筋肉を鍛えることをおすすめします。
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